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靴下

2004年11月26日16:27

外からは蝉の声。それを打ち消すように、風呂場からシャワーの音がする。洗面台に立つと、曇りガラスの向こうに兄の裸体が霞んで見える。また換気扇を廻し忘れたのだろう。引き戸から漂い出る湯気に、差し込む夏の西日が光の筋を作る。

風呂場に続く廊下に、点々と脱ぎ散らかされた白いユニフォームを僕は一つひとつ拾う。真夏の日曜日、野球クラブの練習で流した汗を含んだユニフォームの木綿地が、ずっしりと手に重い。

「暑い、暑い」と言いながら、玄関に鞄を置き、服を脱ぎながら風呂場に向かう兄の足音を、僕はいつも自分の部屋で聞く。その度に抵抗できないような甘い疼きを感じてしまう。兄が風呂場に入ってシャワーを出す音を確認すると、足音を立てないように部屋を出て、階段を降り、廊下に散らかった兄の服を拾って歩く。

集めた下着やユニフォームを洗濯籠に入れる前に、僕は兄の靴下を取り出し、顔を埋める。その、どこまでも懐かしい、まるで自分のもののような悪臭に恍惚となる。胸一杯にそれを吸い込んだあと、誰にも気づかれないようにそのまま洗濯籠に放り込み、急いで部屋に戻って、匂いと感触を反芻しながら自慰をした。

それから数年経ち高校に通うようになった今も、兄の靴下を顔に埋めた時の匂いを思って自慰する。友人たちが声を潜めて話すように、同級生やグラビア・タレントとの性交を夢見ることも、それを想像して自慰することもなかった。ずっとこのままでいいと思っていた。

だから、兄が大学入試に合格して東京に下宿すると決まったとき、僕は途方にくれた。家族で食事を採りながら東京での学生生活を楽しそうに夢語りする兄が恨めしかった。

僕をこんな風にしたのは兄なのに。

両親が買い物に出た昼下がり、当時、小学6年生だった兄はプロレスごっこと称して僕に圧し掛かってきた。力強い腕が僕の肩を押さえた。おもむろに靴下を脱いだ兄は、僕の鼻と口にそれを押し付けた。むせ返るような悪臭に眩暈がするようだった。腹部に当たる兄の股間は硬くなっていた。

それ以来僕は、兄の靴下でしか性的に興奮できない。その兄は、そんなことは忘れてしまったかのように、「たまには遊びに来い」とだけ言い残して東京に出てしまった。

彼女ができた。友人とは、ばかな話で盛り上がる。でも本当はそんなことには何の興味もない。親にねだって買ってもらった真っ赤なバイクを走らせていると、このまま東に何時間か走れば兄のいる東京へ行けると思う。まず真っ先に、横着して洗わずに溜まっている洗濯物の山から靴下を探し出し、顔を埋めるだろう。その狂おしいほどに自分そのものの甘い匂いに、僕はもう言葉を失うだろう。それを口に含んだときに口の中に広がる苦味に、涙目になり、もはや言うことをきかなくなった欲望を擦り上げるだろう。

二車線の緩やかなカーブ。ヘルメットごしの見慣れたまちの風景に、そんな妄想がオーバーラップする。その県道から、黒いランドセルを背負い、体操服のまま帰宅する男の子が小さな路地に入っていくのを見たときに、僕はほとんど無意識にブレーキを握り、ウィンカーを光らせた。



「足の臭いかぎたかった」 高校生逮捕

大津市できのう夕方、「小学生が不審な男に声をかけられ、足をつかまれた」などの通報が4件、相次ぎました。警察はきょう未明、目撃情報から現場近くにいた高校1年の男子生徒を暴行容疑で逮捕しました。

逮捕されたのは、大津市にすむ高校1年の男子生徒(16)です。調べによりますと、男子生徒はきのう午後5時ごろ、大津市内のマンションの駐車場で遊んでいた小学6年の男子児童(11)に、「靴欲しいのか」などと声をかけました。生徒は、逃げようとした男子児童の正面に立ちはだかり、抱きついたり、両足をつかむなどの暴行をした疑いがもたれています。現場近くでは、このほかにも1時間のうちに3件、「赤いバイクに乗った男に靴をぬいでくれと声をかけられたり、あとをつけられたりした」といった通報が相次いでいて、警察が付近を警戒していました。生徒は調べに対し「子供の足のにおいをかぎたかった」と供述し、4件とも容疑を認めているということです。(朝日放送) - 11月26日12時17分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041126-00000003-abc-l25

http://www.fnn-news.com/headlines/CONN00061118.html

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本日の妄言 from 日々,子持ち。

(※本日の日記及びリンク先には,一部読んだ方を不快にさせるような表現が含まれる可能性があります。以下の内容に不快感を覚える方は,読まれないことをお勧めします。 ...

コメント

>K

忘年会やろうよ

by 池田蛇足@管理人(2004年12月17日 16:00)

読みながら、レオンやニキータのコピーを思い出したのは僕だけでしょうか?

と、突然のコメントを寄せてみた。

by 1-ZのK(2004年12月16日 18:37)

>みくしん

消しときました。トラックバックありがとん

by 池田蛇足@管理人(2004年12月02日 19:00)

すみません,リンクの調整を行っていたら,今度は多重トラバになってしまいました・・・
お手数をかけますが,蛇足さん,どうか削除をお願いします。

by みくしん(2004年11月30日 18:49)

>その県道から、黒いランドセルを背負い、体操服のまま帰宅する男の子が小さな路地に入っていくのを見たときに、僕はほとんど無意識にブレーキを握り、ウィンカーを光らせた。

この最後の一文はかっこいいですねー

by コロニアル(2004年11月30日 16:48)

みなさまへ。

過分なお褒めの言葉を多数頂き恐縮です。「不謹慎だ」とか「変態」とかの罵詈雑言を半ば覚悟していたので嬉しいです(笑。今後も思いつきで発作的にでっちあげ(≒創作)を書くとします。

by 池田蛇足@管理人(2004年11月30日 16:04)

意外な才能ですねホントに

by みきなす(2004年11月29日 13:42)

高校時代、水泳部のマネージャーをやっていたのですが、大事な大会を前に、部長が「自己ベストを出せなかった者は、オレの靴下をビニール袋に入れてスーハーしてもらう。」と渇を入れていました。
池田さんの記事(もしかして日記?)を読んだ今、水しぶきをあげてプールに飛び込んでいった部員が、その後まっとうな人生を歩んでいるかどうかが、ふと気になってしまいました。
愛のカタチなんてものは、いつの時代も不気味なのだと、シカオちゃんも言っていました。

by ストッキングちゃん(2004年11月28日 03:20)

蛇足さんてこういうのも書くんですね。鋭利な評論が持ち味だと思ってましたが、意外です。予期せぬ才能を垣間見ました。恐れ入りましたです。

「ゆらゆらばあさん」も面白かったですが、あの文体はまあルポっぽく仕上げてあったんでまだ予想の範囲内でした。今回は脱帽。また創作書いてくださいね。

by ベギラマ(2004年11月27日 13:29)

お見事。こういうもん書ける人に原稿見てもらってたんだと思うと光栄です

by 如月@学芸大(2004年11月27日 11:38)

面白かったです!!
高い文章力と高い妄想力(笑)があってこその傑作ですよ!!しかも皆さん書かれている通りものすごくHな話なのにどこか品があるっす。
今度はぜひぜひ女の子でもっともっとやらしいお話を作ってください(笑

by 歩(2004年11月27日 01:29)

三島由紀夫の世界ですなあ・・・いいですねえ

by みかん聖人(2004年11月26日 21:05)

うー参った。興奮させられました。←変態?俺(涙


by キノシタ(2004年11月26日 19:25)

楽しませていただきましたー。
近親愛あり、同性愛あり、フェティシズムありの、豪華・倒錯愛の世界。でも汚らわしい感じはしませんでした。さすが。

by ひとよたけ(2004年11月26日 18:29)

さすがですね蛇足さん。相変わらずの筆力。どうせこういうのさらっと数十分程度で書いちゃうんでしょ。たまにはウチにも書いてよ

山田君。ごぶさたですな。(っていうか、あの山田君だよね?

by みなかみ@目黒(2004年11月26日 18:28)

これはニュース記事から妄想だけで構築したんですか。・・・すごい。面白かったです。仮説ですらなく「妄想」なとこが最高です。読みやすいし。

by 山田太朗(2004年11月26日 17:05)

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