アンコウがナマズに化けた
2005年03月22日14:15
三連休の初日の昼間に東京を脱出しようと試みた我々が阿呆だったと嗤う人もいるだろうが、いやほんとうに3月19日の渋滞っぷりにはウンザリさせられた。おかげでアンコウがナマズに化けてしまったではないか。
アンコウを食うために北茨城を目指そうと川崎市内で自動車を借りて出発(10時30分)。友人をピックアップするために綱島街道から丸子橋で中原街道に入り東行、環八を北上しようと思ったがこれがぴくりとも動かぬ。そこで目黒通りから裏道で進もうかと思ったが、目的地である上北沢に到着したのは遂に12時を大いに回ってしまっていた。
甲州街道を東行して高井戸で首都高に入るも、またも大変な混雑。向島、箱崎を回避して湾岸線を経由しようかと思えば、うががが。浦安から小菅まで事故でもないのに動かぬ始末。ようやく三郷に至ったのが午後3時。東京脱出に5時間もかかった計算だ。上り線も混雑しており、ここから常磐道を北上して北茨城まで走って帰ってきたら、ご帰宅が深夜何時になるか分からぬ。
ということで、アンコウを諦めて埼玉県吉川町でナマズを食って代用とした。
駅前にナマズのモニュメントがあるこの吉川という町は、江戸川、中川で捕れるナマズ、ウナギなど川魚の類を供する料理屋が数多い。もっとも、天然のナマズが町内で捕れたのは20年前までの話で、今は霞ヶ浦で養殖しているナマズを仕入れて料理しているらしい。
ブログも運営しているというモダンな経営感覚(?)をお持ち「福寿家」がどうやら老舗らしいが、電話で問い合わせるとあいにく「予約で一杯」とのこと。駅前交番の暇そうなオマワリさんに聞くと「本官もナマズを食べたことはないんですよ」とのお返事。「本官」という一人称をホンモノのオマワリさんから聞くのは初めてなのでなんだか嬉しくなったわけだが、困惑しつつも「本官」クンが教えてくれたのは「ますや」「糀屋」「魚竹」の三店。その中の一店に決めた。
店構えは田舎料亭そのもの。個室に通された。腰を落ち着けて窓の外を眺めると、やたらと狭い庭があるが、すぐに高い塀があって視界を遮ってあり、その向こうには民家がある。下手な字で唐詩を書きなぐった墨跡、やたらとカラフルな七福神の掛け軸と、レーザーディスク方式のカラオケセットが置いてあるのに目がいく。だが、まあ悪くはない。こういうものはこういうものとして楽しんだ方がよりハッピーだからだ。
3700円のなまず料理コースを注文した。
小鉢は、なにやら川魚(フナ科の類)の雑魚を集めて甘辛く佃煮にしたもの。ま、佃煮の味である。内臓の苦みがわずかに味覚に変化を与えてくれたが、基本的には甘辛の味付けが強く、血圧が上がりそうだ。次いで出てきた南蛮漬けは、粉をつけて揚げたナマズの切り身にタマネギやニンジンの薄切り、少量の鷹の爪を添えて甘酢で和えたもの。何しろ酢の酸味が強すぎて、顔中の毛細血管が膨張し熱を発する思いであった。
次いで出てきた刺身は薄作りであり、あさつき、もみじおろしと一緒にポン酢で頂く。見た目は鯉のよう。しかしである。味がせぬ。理由は簡単で、甘味、辛味、酸味と、序盤に相次いで投入された味覚三重奏(三重苦?)の強烈なパンチで面食らっているところに、このような淡白な刺身を出されても、舌が痺れて淡い滋味を十分に捉えられないのである。
それでも舌が慣れてくると、噛むごとに独特の旨みを感じるようになった。旨みの種類としてはフグに近いが、舌に触る感触は見た目と同じく鯉に近い。しかし鯉ほどに味に野趣も臭みもないので万人向けの味である。旨いだけに、料理を出す順番だけが惜しまれる。
主菜の登場である。すなわち、天ぷら、蒲焼、叩き揚げの三種。これがまた、食べ終わらぬうちに立て続けに出てくる。そもそも小生、かなりの早食いである。しばしば、君は本当に咀嚼しておるのかと問われるほど早い。これは父親からの教え「早飯、早糞、武士のたしなみ」を忠実に守っているだけなのだが、それについては書き出すと長いから端折る。ともかく、そんな小生の食べる速度でも追いつかぬほどの早さで皿を供されるのである。結局、三種の主菜がすべて卓上に並ぶことになった。
二種は揚げ物、一種は焼き物。いずれも温かなうちに食べなければ食味が落ちることは明白であり、とにかく冷えぬうちにと急いで口に運んだ。
天ぷらを口に入れて噛み切った瞬間、驚いた。ふわふわの白身と、しっかり皮下に蓄積された脂肪が口中で溶け合う。やはり臭みはまるでなく、旨い。難をいえば、量が多すぎる。分厚い切り身を揚げたものが3片もあっては、どれだけ旨くても飽きる。脂がきついので、なおさら飽きやすい。せいぜいが2片でよかろう。
叩き揚げとは、骨や皮、内臓ごとナマズを叩き、つくねにしたものに味をつけて素揚げにしたものだ。鰯のつくねやじゃこ揚げのような雑味のある力強い味が楽しめる。仲居さんには生姜醤油で食べるよう指示されたが、何もつけずに熱々のものを頬張るのがよかろう。残念なことに、供された時点ですでに冷えており、その喜びを体験することはできなかったが。
蒲焼は正直、不要であった。蒲焼はやはりウナギの方がうまいし、ウナギと比べるのは酷というのならば同じヒゲのある黒い淡水魚ということでドジョウと比べてみても、やはり劣る。味に野趣がなく上品過ぎるので、蒲焼のタレに、ナマズ自身の肉の味がほぼすっぽりと隠れてしまうからだ。
今や珍しいナマズ料理を堪能できたことは収穫であった。ま、ナニゴトも経験である。
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コメント
「本官」サイコー。そんな台詞を聞いてみたい・・・うらやましい!