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灰ヶ峰

2006年05月25日18:49

呉には、灰ヶ峰という山がある。

標高は700メートル余りというから、さほど高くはない。しかし急峻である。

この山の頂から呉市内を見下ろすと、その特異な地勢がよく分かる。三方を山に囲まれ、南方だけが海に面している。その海も、瀬戸内海というおおきな内海のなかでも、大小の島や岬に囲まれて、守られている。いわば、内海のなかの内海だ。

昨年、ある晩夏の夜、私はこの山の頂にやって来た。

こうして眼下に呉の町を眺めると、地図で見知っていた地勢が、実際の感覚として理解できる。知らない土地について何かを書こうという時、「高いところに登りたがるもの」云々と嗤われても、できるだけ高いところからその地勢を眺めることにしている。人の目では見えないものが鳥の目には見える。逆に、鳥の目でしか見ていないと見逃すものももちろんあるけれど。

外波に乱されることのない呉湾の海面はまるで鏡のようだ。造船所や製紙工場の燈火が、真っ黒な水面に影を落としている。

その水面に60年以上前に浮かんでいたはずの巨大戦艦について書くために、私はこの土地を訪れた。その船は「大和」と名付けられていた。

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戦前には海軍工廠が置かれ、重工業技術が集積した町「呉」。戦艦大和を生み出した“企業城下町”の痕跡を訪ねて歩く。(2006年5月25日連載開始)
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